全国的に大規模災害が頻発する近年、茨城県でも、平成27年の関東・東北豪雨、令和元年の東日本台風と、多くの県民が被災する災害が立て続けに発生しました。そして、いずれの災害においても、県内外からたくさんの災害ボランティアが被災地に駆け付け、被災者支援活動に尽力いただきました。
このような中、災害ボランティア活動を支援・促進することにより、被災者支援の充実を図るべく、議員提案条例となる「茨城県災害ボランティア活動を支援し,促進するための条例」が、令和2年第4回茨城県議会定例会において可決され、同年12月18日に茨城県条例第59号で公布、同日施行されました。
この条例に基づき、茨城県では、今後起こりうる大規模災害に備えるべく、市町村行政や地域の社会福祉協議会、NPOや災害ボランティア団体等との密接な連携・協力のもと、災害ボランティア支援のために設置した基金を活用しながら、災害ボランティア活動の支援に係る人材育成や体制整備の推進に取り組んでいます。
ここからは、「茨城県災害ボランティア活動を支援し、促進するための条例」(以降、略して「災害ボランティア条例」と呼びます)の概要・主なポイントについて解説します。
1.災害ボランティア条例の「目的」
災害ボランティア条例では、災害ボランティア活動の促進に関し、以下の事項について定め、実現することにより、 被災者支援の充実を図る ことを目的としています。
◎「基本理念」「県の責務」「施策の基本事項」の明確化
◎ 行政・社協・災害ボランティアなど多様な主体の連携体制の構築
2.災害ボランティア条例の「基本理念」
災害ボランティア条例では、以下の事項に配慮して、災害ボランティア活動の支援・推進が図られることを「基本理念」としています。
◎「被災者の意向」と「災害ボランティアの自主性・自立性」の尊重
◎ 行政等・被災者・災害ボランティアにおける信頼関係の下の連携・協力
◎ 被災者の権利利益の保護
◎ 災害ボランティアの生命・身体の安全の確保
◎ 被災者支援に関する的確な情報の収集と提供
3.条例が定める「県の責務と主な施策」
条例において、県は、災害ボランティア活動の促進に関する総合的な施策を実施すること、広域・甚大な被害発生時に災害ボランティア活動による被災者支援に著しい支障が生じる場合には県が率先して必要な措置を講じること、また、平時から次の事項に関して必要な施策をおこなうことを定めています。
(1) 行政等及び災害ボランティア相互の連携強化
「行政等及び災害ボランティア相互の連携強化」の実現のため、次の事項について施策を講じるよう定めています。
◎ 県、市町村、社会福祉協議会、災害ボランティア相互の連携・協力
◎ 災害ボランティアセンターの設置運営に係る役割分担等の明確化
(2) 災害ボランティア活動に関する人材の育成と確保
「災害ボランティア活動に関する人材の育成と確保」の実現のため、次の事項について施策を講じるよう定めています。
◎ 被災者支援に関する専門的知識を有する人材の育成・確保
◎ 学校による「災害ボランティア活動に関する体験の機会」等の提供
◎ 自主防災組織等による「災害ボランティア活動に関する気運の醸成」への取組み
(3) 災害ボランティア活動による被災者支援の迅速かつ適切な実施
「災害ボランティア活動による被災者支援の迅速かつ適切な実施」の実現のため、次の事項について施策を講じるよう定めています。
◎ 災害ボランティア活動の円滑な実施に資する活動を行う団体の育成又は体制整備
◎ インターネットを利用した災害ボランティア活動に関する情報等の迅速な収集と提供
◎ 災害ボランティア活動に資する専門的な知識、技術、経験の活用
◎ 災害ボランティアセンターの設置・運営等に係る研修・訓練の実施
(4) 県外における災害ボランティア活動に対する支援
県民が災害ボランティアとして県外の被災地において活動をおこなう場合においても、県が前述の規定に準じた対応に努めるよう定めています。
(5) 普及啓発
県民が災害ボランティア活動への理解と関心を深められるよう、県が広報活動・研修などの普及啓発をおこなうよう定めています。
4.条例が定める「それぞれの役割」
条例において、「県民」「事業者」「市町村・社会福祉協議会・災害ボランティア」それぞれに関し、次のことを定めています。
◎ 県 民
災害ボランティア活動への理解と関心を深め、積極的な活動に努める。
◎ 事業者
従業員が災害ボランティア活動を行いやすい職場環境の整備に努める。
◎ 市町村・社会福祉協議会・災害ボランティア
災害ボランティア活動の促進に関する連携・協力等を行う。