「はじめての災ボラ活動VOL.1~災ボラ活動ってどんなもの?~」でも触れましたが、被災地で災害ボランティア活動をしたいと思ったとき、一般的な参加方法として、特に災害ボランティア活動が初めての方にお勧めするのが、災害ボランティアセンター(略して災害ボラセン)を通して活動する方法です。
1.災害ボラセンとは
災害ボラセンは、災害時における災害ボランティアの活動が円滑に進むよう、被災地に設置される拠点組織です。被災した方々のニーズ(災害ボランティアに支援してほしいこと)を把握するとともに、被災地外から集まってくる災害ボランティアに、活動してもらいたいニーズ案件を紹介する活動調整(マッチング)をおこないます。
また、災害ボランティアが活動現場にて使用するスコップや一輪車などの資機材の貸し出しや、活動現場までの送迎なども提供しています。
このように、被災した方々に「災害ボランティア活動」という支援の力を届ける役割を担う災害ボラセンは、茨城県内においては、多くの場合、日頃から地域や住民と深く関わり事情を知っている、地元の社会福祉協議会が設置・運営をおこないます。行政やNPOなどの災害ボランティア団体と連携・協力しながら、運営にあたります。
2.災害ボラセンでの活動の流れ
ここからは、皆さんが災害ボラセンを訪問した際に、どのような流れで災害ボランティア活動に参加するのかについて、ご紹介します。
1)受付
まずは災害ボラセンを訪問し、受付をおこないます。
災害ボラセンは通常、災害による被害発生に伴って急きょ設置されるものであり、設置場所も、被災現場(災害ボランティアの活動場所)へのアクセスなどを考慮して決められるため、施設内に受付が準備されることもあれば、屋外にテントを張って設置されることもあります。
受付時間は、朝の9時頃から午前中の時間帯でおこなわれるのが一般的です。社会福祉協議会(災害ボラセン)のホームページ等で事前に受付時間を把握しておきましょう。
災害ボラセンの受付では、大抵の場合、「ボランティア活動保険」に加入することができます。ただ、被災者支援に尽力しているセンターの負担を少しでも軽減させるため、できる限り事前に、お住いの地域の社会福祉協議会での加入をお願いします。事前に加入しておけば、被災地までの移動における事故についても補償対象となります。
なお、災害時に限り、インターネット上からボランティア活動保険にオンライン加入ができる場合があります。
【TOPICS】事前受付のオンライン化
災害ボラセンでの受付は、災害ボランティア活動をする当日に災害ボラセンを訪問した際におこなうのが一般的でした。しかし、近年では、災害ボランティアの方々に、より円滑に現場活動をおこなっていただくため、あるいは新型コロナウイルス感染症のまん延防止対策として、オンラインによる事前受付(スマートフォンやタブレットを使って、前もって申請)を導入する災害ボラセンが増えています。
2)オリエンテーション
受付が済んだら、オリエンテーションを受けます。
オリエンテーションでは、現場での活動における基本的なルール、被災者や一緒に活動するメンバーに対するマナーや気配りの仕方、安全対策や体調管理に関する留意点など、災害ボランティア活動をする上での注意事項を確認します。
(既に同じ災害ボラセンでの活動経験がある場合は、改めてオリエンテーションを受ける必要はなく、これを省略して次のマッチングに進みます。)
最近では、オリエンテーション用の動画が用意され、これを災害ボラセンで視聴する、あるいはWeb上に公開された動画を事前視聴するといった方法もとられています。
参考までに、以下は、茨城県社会福祉協議会が監修として関わり、サイボウズ株式会社(災害支援チーム)が作成したオリエンテーション動画ですので、是非ご覧ください。
3)マッチング
オリエンテーションが終わったら、マッチングをおこないます。
災害ボラセンでは、被災者のニーズ(困っていること)の把握をおこなっており、これらのニーズを解決するための活動を災害ボランティアに紹介することを「マッチング」と呼びます。例えば、その日のニーズとして水害による家屋清掃の依頼案件が20件あり、1件につき10人程度の人手が必要と見込んだ場合、計200人の災害ボランティアを各案件に割り振るマッチングがおこなわれます。
マッチングの場では、案件ごとに活動内容の概要説明があり、多くの場合、災害ボランティアは、自分が希望する案件の説明時に挙手をして活動内容を決めます。
4)グルーピング
災害ボラセンでマッチングする案件については、基本的に災害ボランティアがひとりで活動することはありません。案件ごとに、作業内容に応じた必要人数のグループを組んで動きます。マッチングされたメンバーが集まりグループができたら、災害ボラセンのスタッフから改めて案件についての詳細説明を受けます。
なお、グループのメンバーのとりまとめ役としてリーダーを決めます。メンバーの中に災害ボランティア活動の経験者がいる場合はその人に担ってもらうことが多いですが、全員が初めてということもあります。リーダーの役割は、災害ボラセンや現場での依頼者との連絡調整の窓口となったり、現場での段取り調整の中心となったり、活動終了後に活動報告書を作成したりと様々です。当然わからないことも多い中でリーダーを担うことになるので、他のメンバーには、リーダーひとりに頼り過ぎることなく、グル―プ内での話し合いや役割分担などにより、協力し合いながら活動を進めていただきたいと思います。
5)資機材の貸し出しと現場への送迎
グルーピングの終了後、災害ボランティア活動に必要な資機材の貸し出しを受けます。
必要になる資機材は、災害の種類や活動内容によって異なります。例えば、水害で浸水した家屋の泥出し清掃作業であれば、スコップ、一輪車、土嚢袋、デッキブラシ、モップ、高圧洗浄機などが必要になります。災害ボラセンのスタッフが必要な資機材とその数量を判断して用意していますので、グループで資機材一式を受け取り、運搬車両に積み込むか、あるいは手持ちで活動現場まで持っていきます。
出発の準備が整ったら、グループ単位で活動現場に移動します。移動手段は、主に災害ボラセンの送迎用車両や災害ボランティアに提供してもらった自家用車に同乗する形で移動しますが、活動現場が災害ボラセンから近い場合には徒歩で移動することもあります。
6)現場活動
活動現場に到着したら、まずは依頼者に会って挨拶をした後、活動内容の詳細について、依頼者に確認をとります。グループのリーダーは、グルーピングの段階で「活動指示書」を受け取っており、ここに依頼主の氏名・住所や依頼内容(概要)が記載されていますので、これを参考にして、例えば「この部屋の家財道具を全部、庭に運び出してほしい」といったような「今日依頼者がやってほしいこと」を、リーダーが中心となって聞き取りをしてから、実際の活動に入ります。
なお、依頼者とは、活動中も丁寧にコミュニケーションをとりながら作業することが重要です。確認不足のまま作業をしてしまうと、「家財道具の廃棄をお願いしたけれど、大切なものまで捨てられてしまった」といったような、依頼者を悲しませてしまう状況も起こり得ます。
現場での活動の種類・内容は多岐にわたりますが、ここでは、近年の茨城県でも発生事例の多い「水害」を例に挙げます。家屋が浸水被害にあった被災者からは、主に「家財の搬出等」「泥の撤去」「家屋の清掃」といった作業依頼があがってきます。
家財の搬出等
家屋の中が浸水した場合、水に浸かる・汚れるなどして廃棄処分となる家財が出るので、これらを運び出し、必要に応じて災害廃棄物の仮置場まで運びます。
廃棄しないまでも清掃・乾燥などをして今後も使う家財や、屋内の泥撤去や掃除をするために運び出す必要のある家財もあるため、そういった家財は、あとで屋内に戻すことを考慮した置き場所や導線を選んだり、雨対策としてブルーシートをかけるなど、丁寧に扱う必要があります。
※水を含んだ畳は非常に重くなるので、複数人で運びます。
泥の撤去
水害の場合、浸水した被災者の自宅では、「水とともに泥が家屋や庭に流れ込み、水が引いた後も大量の泥が残ってしまう」といった状況になるため、この泥を撤去する作業(泥出し)をおこないます。
泥出しの作業の流れとしては、一例を挙げると、泥をスコップですくって土嚢袋に入れ、これを一輪車に積んで回収場所まで運び出す、といった作業になります。
また、家屋の床上・床下浸水においては、床下にも泥が残るケースがあります。この場合、床板を剥がしたり、あるいは床下に潜って泥を撤去し、乾燥させたうえで、消毒をします。専門的な知識や技術が必要な作業も含まれるため、このニーズに対応できるかどうかは災害ボラセンの事情によって異なりますが、例えば専門的な作業ができる技術系ボランティア団体や経験豊かな災害ボランティアの参加があれば、こういった床板剥がしなどを彼らに担ってもらい、床下の泥出しなどは一般の災害ボランティアが作業する、といった役割分担で被災者のニーズに応えているケースも多々あります。
家屋の清掃
泥がついた家屋の壁や柱、床、家財などを、雑巾や高圧洗浄機などを使って洗浄します。
7)片付けと活動報告
その日の現場作業が終了したら、いったん災害ボラセンに戻ります。
災害ボラセンに戻ったら、スコップなど使用した資機材を洗浄して返却します。故障など不具合があった場合には、返却の際に報告します。
その後、手洗い・うがい、靴の洗浄・消毒などを済ませたら、災害ボランティア活動は終了となるので各自、帰途に就きます。
なお、災害ボラセンでは大抵の場合、リーダーに「活動報告書」の作成をお願いしています。活動報告書には、現場作業の進捗具合や次回の活動に向けた連絡事項などを記載します。現場の最新情報を持っているのはその日に活動した災害ボランティアであり、活動の中で感じた改善すべき点などの「気づき」をしっかりと災害ボラセンに伝えることで、その後の効果的な支援につなげることができる、非常に重要な作業となります。
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